2024年 ingo PEACE.はミャンマー連邦共和国へ医療物資を届ける挑戦を成功させました。公正な機会提供のために各方面と対話し、「できないと言われることにこそ取り組む」姿勢を体現した事例を報告します。
信頼のおけるパートナーと連携し
計画をスピーディーに実行
『公正で中立な情報と機会提供を旨とし、各国政府機関及び民間とのグローバルな連携を通して、共通の国際協調路線を策定し協調戦略を民主的に実施することにより、国際社会の安定と世界経済活動の振興に対し、持統的かつ継続的に寄与する』。この団体の理念に基づき、ingo PEACE.は、最初の支援活動をミャンマーへの医療物資支援に決定した。
このニュースを公式サイトで発表したのは2024年5月1日だが、プロジェクトの始動は同年1月にさかのぼる。特定の国や地域が国際社会から経済的な制約や圧力を課されると、生活必需品や医薬品が不足し、物価が急騰、雇用が失われるといった経済的ダメージに加え、治安の悪化や社会不安がすでに困難な状況にある一般市民の生活に一層深刻な影響を与えることが少なくない。ingo PEACE.設立準備室内(当時)では、国連をはじめとする多くの団体によって世界中で医療援助が行われている中でも、政治的な問題でミャンマーの支援は進まず、困窮が深まる一方であった現状に対し限られた選択肢しか持たない一般市民の生活に関する分析、議論が行われていた。そして、公正で中立な情報と機会提供を旨としている団体だからこそ対話を通じてミャンマーの人々の力になれると結論づけた。
こうしてミャンマーの人々への緊急人道支援を決定すると、提携するNGOに対しロジスティクスに関する協力を打診。それと並行して、最大の難関であったミャンマー側の物資受け入れの承認を得るべく保健省にアプローチを始め、数か月にわたって交渉し、書簡のやり取りを続け、調整を行った。その結果、ミャンマー赤十字社を窓口とする物資の受け入れ態勢を整えることができた。
4月には支援物資の荷造りが始まり、6月初旬に米国から船便で物資を出荷した記録が残っている。
人道支援物資だからといって、輸送が優遇されるわけではない。米国からミャンマーへの船便の輸送には数か月が見込まれ、経由地の混雑状況次第でさらに遅れる場合もあり、国によっては手続きの書類が正常に処理されない恐れがあった。また、貨物が到着してからは、持ち込みが認可された物品であるかパッキングリストとの詳細な照合を含む手順を踏み、荷受人が規定の期日内に確実に受け取りを完了しなければならない。寄付された物資を必要とする人の元に速やかに間違いなく届けるには、煩雑なプロセスを的確にクリアしなくてはならないのだ。
人道支援のロジスティクスの知見あるパートナーNGOとの連携は不可欠だった。信頼できる輸送会社を選び認可の非営利団体に依頼するなど、物流におけるリスク回避を担った彼らの適切な采配で、包帯から手術用ガウン、各用途別の注射用シリンジや針、酸素マスク、歯ブラシなど、総額47万ドルに及ぶ医療支援物資を載せたコンテナが、8月末、無事ヤンゴンに入港した。
ミャンマーに送られた医療支援物資
“困難を可能にする”
前例をつくることに成功

2024年9月1日、船便の到着を受けて、ヤンゴンのホテルにて支援物資引き渡しのセレモニーが行われた。赤十字関係者、ミャンマー国内の関係者、さらに各国の駐ミャンマー大使、そしてingo PEACE.からは副代表が出席した。
開式にあたり、ミャンマー赤十字社長のProfessor Dr. Myo Nyuntが次のように述べた。
「本日の式典は、ingo PEACE.とのパートナーシップにおける重要なマイルストーンを記念するだけでなく、『人類の苦しみを軽減し、すべての人々の健やかな生活を追求する』という私たちが共にする使命と、団結の力を心に刻むものでもあります。受け取った物資は間違いなく、緊急の医療を要する方への迅速な対応を可能にしてくれることでしょう。厚い支援と献身に深く感謝します」。
この言葉を受け、ingo PEACE.を代表してS.M. NAZRUL ISLAM理事が、以下のようなスピーチを行った。
「今回は、ミャンマー赤十字社をはじめとするパートナーたちと連携して、この医療支援を達成することができました。私どもingo PEACE.がこの国のためにできることは、まだまだたくさんあります。これからも、ミャンマーを思う団体や個人、その他多くの賛同者と連携しながら、ミャンマーの経済・社会文化の発展を支援する努力を続けていきたいと思います」。
その後式典に移り、調印式と栄誉証書の贈呈が行われた。そして最後にミャンマー赤十字社の執行委員を務めるProfessor Dr. Tin Maung Hlaingから「ingo PEACE.からの思いやりのある支援は人道主義の真の精神を体現しており、希望の光となっています。あなた方の寄付は単に医薬品の寄付ではありません。それは生きていくのに苦労している人々にとっての命綱です。千マイルの旅も一歩から始まります。いま、私たちは最初の一歩を無事に踏み出すことができました」という謝辞が伝えられた。
このセレモニーの模様を多くのメディアが報じ、ミャンマー赤十字の公式SNSにも掲載された。特筆すべきは、発信されるとすぐに他国・他団体の支援が後に続いたことだ。ingo PEACE.の挑戦が、多くの人々が不可能と信じていた人道支援の突破口を開いた。
通関などの手続きを終えた10月21日、支援物資は正式にミャンマー赤十字の手に渡り、医療大学病院や保健省管轄の統治機構「Central Medical Stores Depot」など、必要とされる現場に届けられている。
ingo PEACE.では、既にいくつもの新しいプロジェクトが進行中だ。